相続放棄のしてもよい行為と、してはならない行為

相続放棄が認められない行為とは?

相続放棄は、被相続人のプラスの財産もマイナスの財産も一切を引き継がないことができる行為です。
ただ、相続放棄の前後を問わずに、相続財産の一部でも「処分」した場合には認められませんし(民法921条1号)、「隠匿」、「消費」した 場合も認められません(民法921条3号)。莫大な借金や保証債務があることを知らずに、遺産に手を付けてしまうことはよくあることですが、「処分」や 「消費」などをすると相続放棄が認められないことになります。
では、「処分」や「隠匿」はどのような行為が当たるのでしょうか?相続放棄前にしてはいけない行為、してもよい行為について見てみたいと思います。

してもよい行為

以下の行為については、裁判例上、相続放棄の効力が認められています。

  1. 1.保存行為、短期賃貸すること(民法921条1号但書)
  2. 2.遺産から葬式費用、火葬費用、治療費を支払うこと(大阪高裁昭和54年3月22日決定。ただし、あまりにも高額な場合には認められない可能性があります)
  3. 3.形見分けで価値がない物の取得
  4. 4.形見分けで、プラスの財産に占める割合が低いもの(ただし、これも程度問題で、次の3項の⑥の裁判例もあります)
  5. 5.遺産から仏壇等購入すること(大阪高裁平成14年7月3日決定。ただし、あまりにも高額の場合には認められない可能性があります)
  6. 6.生命保険の死亡保険金の受領(死亡保険金は、相続財産ではないため受領することができます。)

してはならない行為

以下の行為については、裁判例上、相続放棄が認められませんでした。

  1. 1.売掛金の取立て
  2. 2.賃借権確認訴訟の提起(自身が賃借権を相続で受け継いだことの確認を裁判で求める行為です)
  3. 3.賃料受領口座の変更(賃料の送金口座を被相続人から自己に変更するように通知をする場合などです)
  4. 4.被相続人の債務の弁済
  5. 5.遺産分割協議(なお、遺産分割協議は「処分」に当たらないとする裁判例もありますが、遺産額や債務額など詳細な事実認定をしないと判断が難しいと思われ、注意が必要です)
  6. 6.毛皮コート、絨毯、スーツなどの遺品のほとんどを持ち去る行為(東京地裁平成12年3月21日判決は、小型トラックで2回にわたり、毛皮コート、絨毯、スーツなど衣類全てを持ち去った行為は、「形見分け」でないとします。)

 

赤の他人が価値ある財産を処分できないと考えるとわかりやすい

相続放棄をすると、例えると、赤の他人が財産を管理する状態になります。 そのため、赤の他人として、許される行為かどうかというように考えると、相続放棄の前後を問わず、認められるか否か判断しやすいといえます。
ただし、この点は、証拠評価や事実認定など裁判上の問題がありますので、相談されることをお勧めします。